Banananight

七夜連続上映2017 〈食べる・飲む・効く、バナナの世界〉レポート

2017年12月2日、ポレポレ東中野にて「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」の七夜連続上映の第一夜が開催されました。

今夜のテーマは、ノーバナナ、ノーライフ〈食べる・飲む・効く、バナナの世界〉」。
私たちが普段スーパーや八百屋で見かける身近な存在のバナナをテーマに、どんな映像が見ることができるのだろう−−?魅惑のバナナフルなイベントをご紹介します!

バナナといってもただ食べるためだけの存在ではありません。バナナには多様な利用方があり、今回の上映ではアフリカとニューギニアにおける人びとのバナナの利用法を、それぞれ約60年前のエンサイクロペディアの映像とごく最近の調査の映像を見比べる形で学ぶことができました。映像の合間合間にはゲストの方々によるトークもあり、バナナの基礎知識を勉強できました。

近年の映像は本日お越し下さったゲストの方々によるもので、日本のバナナ研究を牽引する方々です。そんなバナナの専門家の方たちが集まって、話についていけるか、バナナの素人である筆者は上映前少し不安でしたが、実際お話が始まるとそんな心配は無用でした。映像を流しながら解説を交える形での上映は、普通の映像作品の鑑賞とは違うもので新鮮!エンサイクロペディアによる映像は音声が入っていないからこそゲストの方々のお話しが重要なものとなり、無音映像を一味違った形で楽しめました。「貴重な資料映像」と解説が互いの長所を生かしていましたし、それは単なる映像上映だけでは叶わなかったでしょう。そういった意味で質疑応答も理解を深めるための大事な時間でした。

バナナビールをつくる、飲む!
さて、最初の映像はアフリカのバナナビールの醸造方法でした。そこで驚いたのが、ECに収録された1950年代の映像も、ゲストの方が撮影した現在の映像も、醸造方法に大きな変化(例えば機械の導入など)がなかったことです。(特に鑑賞者によって異文化や違う地域の)調査映像の鑑賞時に生じやすいのが、その人々が今でも「未開な」生活を送っている、プリミティブな人々であるという誤解や偏見が生まれることです。しかし、今回の映像では確かに「伝統的」な側面もあるものの、バナナと人の歴史の長さを思い知り、偏見が入り込む余裕がなかったと思います。バナナをめぐる人々の生活を60年前の映像と最近の映像と見比べることでで互いの点を線で結ぶような理解が得られました。両者の映像によって、変化したもの、変化していないもの、その両方を見ることができたのです。

何をするのもバナナ、バナナ!
とにかく映像全体を見ながら感じたのは、何をするにも「バナナ」を使うこと。バナナビールを作る際にバナナの葉を使用するし、バナナで料理を作る際にも肉やスープを蒸すために使用するのもバナナの葉であるし、簡単に言えばバナナで何か食べる・飲むものを作る時にはバナナの葉で蒸しバナナの葉でさらに蒸しなおしバナナの葉に盛り付ける…そう、どんな場面にもバナナが出てくるのです。バナナの花は初見だったのですが、バナナの花の炒め物はまさにご飯と合いそうなお料理でした。料理だけではありません。当日はロビーにもバナナのカゴやざる、お人形などが展示され、バナナがあらゆる方法で活用されていることを見て、触って感じることができました。ゲストの方々は専門分野がそれぞれ異なるため、人々の生活に深く関わっているものとしての「バナナ」だけでなく、バナナの持つ栄養についても教えてくださいました。バナナの持つ栄養も、まだまだ発見の余地があるそうです。

効く、バナナ!
数ある映像の中でもひときわ会場を沸かせたのがECに収録された西ニューギニアの「バナナの葉での頭痛と首の痛みの呪術的治療」(1970年撮影)でした。温灸のようにバナナの葉を患部に乗せて悪いものを葉に移動させていくように、現地ではバナナは悪いものを取り除く効用があるものとしても見られているそうです。この地域は紛争で長らく外国人研究者が調査に入ることができないため、この治療儀礼が今も続いているかはわからないとのこと。映像自体の貴重さもさることながら、映像からはバナナと人の関わりが浅いものではないことが伝わりました。

アフリカとニューギニアでは、バナナの調理方法も、利用方法も異なることがわかりました。バナナ1つとってもそこから彩られている世界は違うものです。道具も違えば作り方も違う。モノは文化でもあることを痛感する映像でした。解説の際ゲストの方々がアフリカやニューギニア以外の地域の名前も出されており、他の地域ではどのように利用されているのだろう、と上映が終わる頃にはますますバナナのことが知りたくなっていました。

2つのバナナの世界
映像をすべて見終えた後のトークで、ゲストの方々はバナナには2つの世界があるとおっしゃっていました。1つは地域で利用されているバナナ。これはいろいろな地域や文化で葉も実も利用されているバナナをめぐる世界です。もう1つが世界中の市場を渡るバナナ。これは地域で使用されているバナナとは違った世界、つまり私たちが普段目にするような葉を取り除いた、1つの品種の実のみのバナナの世界です。バナナ1つを対象にしても、そこには実に多様な探求の世界が広がっているのです。その世界を拡げている専門家の方たちから漏れ出る「バナナ愛」は、鑑賞者をたじろがせることなく、ストレートに伝わってきました。たくさんの仮説を聞くたびに、バナナの持つ可能性にワクワクしました。そして最後に現在のバナナの危機的状況もご指摘いただきました。

上映後もバナナについて多くの方がロビーで談笑されていました。バナナに関心を持ってもらう、ということが今日の上映の1つの目的であったのなら、それは大成功だったと言えるでしょう。

旅をしたかのような上映会
全体を通して今夜の上映は、司会の方がおっしゃっていたように、「見る」だけでなくまさにバナナをめぐる旅をしたような気分になれるイベントでした。株式会社リマさんより提供いただき来場の皆さまへお配りしたバナナカステラも、ご好評いただきました。やはり映像を見ていると、食べたくなってきます!ゲストの方々、本日はありがとうございました!

板久 梓織