EC応援団 Vol.5
竹田由美
ECフィルムは私にとって、
世界のあちこちに通じている、
ゆったりとした汽車のようなもの。
ECフィルム上映会に初めて参加させていただいたのは、vol.5「仮面」の会でした。その中で上映された「夜の仮面の登場」が、あれから3年近く経つ今も忘れられません。〈タタッ、タタッ・タタッ タータッ〉という独特の太鼓のリズムが闇にうねり、炎のゆらめきの中に浮かび上がる大きな仮面…。今でも、自分はあの場に「居た」のではないか、ともに焚き火を囲んでいたのではないか、という錯覚があります。同じように、その場にいた感触が残るように感じたのは、「サミ人 センネグラスと靴」。サミの人たちが手際よく靴に詰める草をまとめていく所作を、自分も湖のほとりに腰を下ろして眺めていたような、極地の短い夏の陽射しを浴びながらセンネグラスの匂いを嗅いだような気がしています。
ECフィルムは私にとって、世界のあちこちに通じている、ゆったりとした汽車のようなもの。停車駅で気まぐれに下りたり、または車窓からその地の人々の営みを眺めているので、その行動にどのような意味があり、それが伝統的なものなのか、はたまたその人だけの思い付きの行動なのかもわからない。けれど、私はその場に居たような気がする。その空気を吸ったような気がする。カラハリ砂漠に汽車がとまり、窓の外をふと見ると、ある親子は木の臼を作ろうとしているようなのに、まず土を掘るところから始めている(「コオ・ブッシュマン 木臼づくり」)。そして汽車のなかでは、「これからどうやって臼を作るんだろうね?」と乗客が話し合っている。ECフィルム上映会は、まさにそんな感じです。さあ、次はみんなで、どこ行きの汽車に乗りましょうか。
公益財団法人せたがや文化財団「生活工房」で展示企画を手掛ける学芸員。主な仕事に、昨今の活版印刷復興のきっかけを作った「活版再生展」(2007年)、「7つの海と手しごと」シリーズ(2011年―16年)、「I’m so sleepy どうにも眠くなる展覧会」(2012年)、「時間をめぐる、めぐる時間の展覧会」(2016年)など。
公益財団法人せたがや文化財団 生活工房
「暮らしをデザインする」ことをコンセプトに、展覧会やイベントを開催している世田谷区立の文化施設。「生活するひとの目線」で社会的な問題もやさしくひらき、「生活にかえっていく」ことを目指して事業を展開している。ECフィルムを活用した過去のイベントに「ブナ帯☆ワンダーランド」展(2015年)、「時間をめぐる、めぐる時間の展覧会」(2016年)がある。
http://www.setagaya-ldc.net/
Select Film
夜の仮面の登場
記号 | 番号 | カテゴリ | 大分類 | 中分類 | 小分類 | 大陸 | 場所① | 場所② |
E | 2630 | 民族学 | 音楽・演奏・舞踊・演劇・語り | 舞踊の仮面 | アフリカ | 赤道アフリカ | カルメーン草原 | |
場所③ | 民族 | 製作年 | 公表年 | 時間 | 色調 | 解説書 | デジタル | |
ティカール族 | 1977 | 1980 | 10:00 | カラー | 無 | あり |
センネグラスと靴
記号 | 番号 | カテゴリ | 大分類 | 中分類 | 小分類 | 大陸 | 場所① | 場所② |
SD | 1 | 民族学 | 衣文化 | 製品の製作 | はきもの | ヨーロッパ | 北ヨーロッパ | 東ノルウェー |
場所③ | 民族 | 製作年 | 公表年 | 時間 | 色調 | 解説書 | デジタル | |
サーミ人 | 1975 | 不明 | 16:00 | カラー | あり | あり |