EC応援団 Vol.3
本間一恵
カゴ作りの範疇を超えて、
生活の中にある「編む」という方法。
エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ、このフィルムの存在を知ったのは、もう20年以上も前のことになる。
いくつかのグループで数人づつ、私たちの興味の的である「カゴ」関連のタイトルを選び、何度も市ヶ谷の下中財団に足を運んだ。閲覧用のメモ用紙を作っていたので、その枚数だけのフィルムを見せてもらったことになる。その用紙の束がドサッと残っているから、どうやら私がヘビーユーザーの一人であることは間違いないだろう。
編んだり組んだりするカゴ作りの技術に的を絞るので、民族学映像インデックスの中の「ものを作る」という項が中心になった。しかし実際はあらゆる項目の中に関係のあるものが見出せて、そのことで「編む」という方法がカゴ作りの範疇を超えて生活の中でいかに重要であるかを教えられた。
その後2013年の連続上映会③「かご編み」のゲストに呼んでもらったが、その時のプログラムの中にブラジルの「ヤシの葉の玩具づくり」があった。クラホ族のお父さんが子供にヤシの葉でおもちゃを作って子供に渡すというものだ。沖縄の草玩具の作り方とはちょっと違うな、とか、あんな大きなヤシの葉は手に入らないなあ、とか、裸に近い格好の親子の表情があんなに硬いのはカメラが回っているからかな、とか思いながら見る。
何十年も前の遠く離れた場所の映像は、今ここにいる自分とはかけ離れているようでもあるが、身近な材料をチョイチョイっと加工して、ホイと子供に手渡す、そんな行為はいつの時代や場所でもあったはずだ。異文化の驚きや生活スタイルの違和感がまずは目に入ってくるのだけれど、すべてのフィルムの底には共通するものが流れているのかもしれない。
どんなに最先端の技術でも時間を巻き戻すことはできない。記録された映像は、人それぞれ大事なものをそこから読みだすことのできる貴重な財産だ。
バスケタリー作家。1980年代はじめ、関島寿子の指導のもとに、新しい造形方法としてのかご(バスケタリー)に出会う。以後、伝統的なかごの作り方を学びつつ、現代バスケタリーの作品を制作し、個展、グループ展で発表。1989~バスケタリーニュース編集人。和光大学、京都造形美術大学通信部等でバスケタリーを講習。2005青谷上寺地遺跡、2011東名遺跡、2012三内丸山遺跡出土のかごを復元制作。著書『クラフトテープで作る』(日本ヴォーグ社)。